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第1章 – 2日目 – Ⅱ 医薬品の効き目や安全性に影響を与える要因

登録販売者試験に合格するために独学で学ばれてる方にも
分かりやすく解説とポイントを押さえていきます。
過去問題から作成したテストもあります。
さぁ、合格目指して頑張っていきましょう。

クローバーと猫さん

今回は医薬品の効き目や安全性に影響を与える要因について説明していきますよ。

目次

副作用とは

世界保健機関(WHO)の定義によれば、医薬品の副作用とは、「疾病の予防、診断、治療のため、又は身体の機能を正常化するために、人に通常用いられる量で発現する医薬品の有害かつ意図しない反応」とされています。

クローバーと猫さん

医薬品の副作用は、発生原因の観点から次のように大別することができます。

(a) 薬理作用による副作用

医薬品の有効成分である薬物が生体の生理機能に影響を与えることを薬理作用といいます。通常、薬物は複数の薬理作用を併せ持つため、医薬品を使用した場合には、期待される有益な反応(主作用)以外の反応が現れることがあります。主作用以外の反応であっても、特段の不都合を生じないものであれば、通常、副作用として扱われることはないですが、好ましくないものについては一般に副作用といいます。

複数の疾病を有する人の場合、ある疾病のために使用された医薬品の作用が、その疾病に対して薬効をもたらす一方、別の疾病に対しては症状を悪化させたり、治療が妨げられたりすることもあります。

(b) アレルギー(過敏反応)

免疫は、本来、細菌やウイルスなどが人体に取り込まれたとき、人体を防御するために生じる反応ですが、免疫機構が過敏に反応して、好ましくない症状が引き起こされることがあります。通常の免疫反応の場合、炎症やそれに伴って発生する痛み、発熱等は、人体にとって有害なものを体内から排除するための必要な過程ですが、アレルギーにおいては過剰に組織に刺激を与える場合も多く、引き起こされた炎症自体が過度に苦痛を与えることになります。
このように、アレルギーにより体の各部位に生じる炎症等の反応をアレルギー症状といい、流涙や眼の痒かゆみ等の結膜炎症状、鼻汁やくしゃみ等の鼻炎症状、蕁麻疹や湿疹、かぶれ等の皮膚症状、血管性浮腫のようなやや広い範囲にわたる腫れ等が生じることが多いです。

クローバーと猫さん

アレルギーのポイントをまとめると…

  • 流涙や眼の痒かゆみ等の結膜炎症状、鼻汁やくしゃみ等の鼻炎症状、蕁麻疹や湿疹、かぶれ等の皮膚症状、血管性浮腫のようなやや広い範囲にわたる腫れ等が生じることが多い
  • アレルギーは、一般的にあらゆる物質によって起こり得るものであるため、医薬品の薬理作用等とは関係なく起こり得るものであり、また、内服薬だけでなく外用薬等でも引き起こされることがある
  • 医薬品の有効成分だけでなく、基本的に薬理作用がない添加物も、アレルギーを引き起こす原因物質(アレルゲン)となり得る。アレルゲンとなり得る添加物としては、黄色4号(タートラジン)、カゼイン、亜硫酸塩(亜硫酸ナトリウム、ピロ硫酸カリウム等)等が知られている
  • 普段は医薬品にアレルギーを起こしたことがない人でも、病気等に対する抵抗力が低下している状態などの場合には、医薬品がアレルゲンになることがあり、思わぬアレルギーを生じることがある
  • アレルギーには体質的・遺伝的な要素もあり、アレルギーを起こしやすい体質の人や、近い親族にアレルギー体質の人がいる場合には、注意が必要
  • 医薬品を使用してアレルギーを起こしたことがある人は、その原因となった医薬品の使用を避ける必要がある。また、医薬品の中には、鶏卵や牛乳等を原材料として作られているものがあるため、それらに対するアレルギーがある人では使用を避けなければならない場合もある
クローバーと猫さん

特に「アレルギーは、一般的にあらゆる物質によって起こり得るものであるため、医薬品の薬理作用等とは関係なく起こり得るものである」というのはしっかり覚えておこう

一般用医薬品の副作用について

クローバーと猫さん

副作用は、眠気や口渇等の比較的よく見られるものから、日常生活に支障を来す程度の健康被害を生じる重大なものまで様々です。

医薬品が人体に及ぼす作用は、すべてが解明されているわけではないため、十分注意して適正に使用された場合であっても、副作用が生じることがあります。そのため、医薬品を使用する人が副作用をその初期段階で認識することにより、副作用の種類に応じて速やかに適切に処置し、又は対応し、重篤化の回避が図られることが重要となります。

一般用医薬品は、軽度な疾病に伴う症状の改善等を図るためのものであり、一般の生活者が自らの判断で使用するものです。通常は、その使用を中断することによる不利益よりも、重大な副作用を回避することが優先され、その兆候が現れたときには基本的に使用を中止することとされており、必要に応じて医師、薬剤師などに相談がなされるべきです。
一般用医薬品の販売等に従事する専門家においては、購入者等から副作用の発生の経過を十分に聴いて、その後の適切な医薬品の選択に資する情報提供を行うほか、副作用の状況次第では、購入者等に対して、速やかに適切な医療機関を受診するよう勧奨する必要があります。また、副作用は、容易に異変を自覚できるものばかりでなく血液や内臓機能への影響等のように、明確な自覚症状として現れないこともあるので、継続して使用する場合には、特段の異常が感じられなくても医療機関を受診するよう、医薬品の販売等に従事する専門家から促していくことも重要です。

過去問にチャレンジ

薬理作用やアレルギーに関する正誤を答えよ。

  • 副作用は、眠気や口渇等の比較的よく見られるものから、日常生活に支障を来す程度の健康被害を生じる重大なものまで様々である。
  • 医薬品が人体に及ぼす作用は、すべてが解明されているわけではないので、十分に注意して適正に使用された場合であっても、副作用が生じることがある。
  • 副作用の状況次第では、医薬品の販売等に従事する専門家は購入者等に対して、速やかに適切な医療機関を受診するよう勧奨する必要がある。
  • 副作用は、容易に異変を自覚できるものがほとんどであり、継続して使用する場合は、特段の異常が感じられる場合のみ医療機関を受診するよう、医薬品の販売等に従事する専門家から促すことが重要である。
解答と解説

(1)〇 
(2)〇
(3)〇 
(4)× :容易に異変を自覚できるものばかりでなく、血液や内臓機能への影響等のように、明確な自覚症状として現れないこともある。

2)不適正な使用と副作用

クローバーと猫さん

医薬品の不適正な使用は、概ね以下の2つに大別することができます

(a) 使用する人の誤解や認識不足に起因する不適正な使用

  • 選択された医薬品が適切ではなく、症状が改善しないまま使用し続けている場合や、症状の原因となっている疾病の根本的な治療や生活習慣の改善等がなされないまま、手軽に入手できる一般用医薬品を使用して症状を一時的に緩和するだけの対処を漫然と続けているような場合はいたずらに副作用を招く危険性が増すばかりでなく、適切な治療の機会を失うことにもつながりやすい
  • 「薬はよく効けばよい」「多く飲めば早く効く」等と短絡的に考えて、定められた用量を超える量を服用したり、小児への使用を避けるべき医薬品を「子供だから大人用のものを半分にして飲ませればよい」として服用させるなど、安易に医薬品を使用するような場合には、特に副作用につながる危険性が高い
  • 人体に直接使用されない医薬品についても、使用する人の誤解や認識不足によって使い方や判断を誤り、副作用につながることがある
  • 使用量は指示どおりであっても、便秘や不眠、頭痛など不快な症状が続くために、長期にわたり一般用医薬品をほぼ毎日連用(常習)する事例も見られる。便秘薬や総合感冒その症状を抑えていることで重篤な疾患の発見が遅れたり、肝臓や腎臓などの医薬品を代謝する器官を傷めたりする可能性もある
  • 長期連用により精神的な依存がおこり、使用量が増え、購入するための経済的な負担も大きくなる例も見られる

このような誤解や認識不足による不適正な使用や、それに起因する副作用の発生の防止を図るには、医薬品の販売等に従事する専門家が、購入者等に対して、正しい情報を適切に伝えていくことが重要となります。購入者等が医薬品を使用する前に添付文書や製品表示を必ず読むなどの適切な行動がとられ、その適正な使用が図られるよう、購入者等の理解力や医薬品を使用する状況等に即して説明がなされるべきです。

医薬品を本来の目的以外の意図で使用する不適正な使用

医薬品は、その目的とする効果に対して副作用が生じる危険性が最小限となるよう、使用する量や使い方が定められています。医薬品を本来の目的以外の意図で、定められた用量を意図的に超えて服用したり、みだりに他の医薬品や酒類等と一緒に摂取するといった乱用がなされると、過量摂取による急性中毒等を生じる危険性が高くなり、また、乱用の繰り返しによって慢性的な臓器障害等を生じるおそれもあります。

一般用医薬品にも習慣性・依存性がある成分を含んでいるものがあり、そうした医薬品
がしばしば乱用されることが知られている。特に、青少年は、薬物乱用の危険性に関する認識や理解が必ずしも十分でなく、好奇心から身近に入手できる薬物を興味本位で乱用することがあるので、注意が必要です。

適正な使用がなされる限りは安全かつ有効な医薬品であっても、乱用された場合には薬物依存を生じることがあり、一度、薬物依存が形成されると、そこから離脱することは容易ではありません。医薬品の販売等に従事する専門家においては、必要以上の大量購入や頻回購入などを試みる不審な者には慎重に対処する必要があり、積極的に事情を尋ねる、状況によっては販売を差し控えるなどの対応が図られることが望ましいです。

過去問にチャレンジ

一般用医薬品の使用に関する次の記述について正誤を答えよ。

  1. 一般用医薬品には、習慣性・依存性がある成分を含んでいるものがあり、乱用されるおそれがある。
  2. 一般用医薬品の不適正な使用により、一度でも薬物依存が形成されると、そこから離脱することは容易ではない。
  3. 一般用医薬品の選択について判断するのは、専門家であることから、一般用医薬品の服用後に
    症状の悪化や副作用等が発生する可能性は極めて低い。
  4. 医薬品の販売等に従事する専門家は、一般用医薬品を大量購入したり、頻回購入を試みる購入者に
    対し、状況によっては販売を差し控えるなどの対応を取ることが望ましい。
解答と解説

(1)〇 
(2)〇
(3)× : 一般用医薬品は一般の生活者が自らの判断で使用するものです。その為、使用する人の誤解や認識不足に起因する不適正な使用により副作用が起こりえる。
(4)〇 

3)他の医薬品や食品との相互作用、飲み合わせ

相互作用とは

複数の医薬品を併用した場合、又は保健機能食品(特定保健用食品、栄養機能食品及び機能性表示食品)や、いわゆる健康食品を含む特定の食品と一緒に摂取した場合に、医薬品の作用が増強したり、減弱したりすることを相互作用といいます。作用が増強すれば、作用が強く出過ぎたり、副作用が発生しやすくなり、また、作用が減弱すれば、十分な効果が得られないなどの不都合を生じます。

クローバーと猫さん

相互作用には、医薬品が吸収、分布、代謝(体内で化学的に変化すること)又は排泄される過程で起こるものと、医薬品が薬理作用をもたらす部位において起こるものがあります。相互作用を回避するには、ある医薬品を使用している期間やその前後を通じて、その医薬品との相互作用を生じるおそれのある医薬品や食品の摂取を控えなければなりません

お団子ヘアの女の子

メモメモ…
相互作用は医薬品が吸収、分布、代謝、排泄される過程で起こるものと、医薬品が薬理作用をもたらす部位において起こるものがあると…

(a)他の医薬品との成分の重複・相互作用

一般用医薬品は、一つの医薬品の中に作用の異なる複数の成分を組み合わせて含んでいる
(配合される)ことが多く、他の医薬品と併用した場合に、同様な作用を持つ成分が重複することがあり、これにより、作用が強く出過ぎたり、副作用を招く危険性が増すことがあります。

クローバーと猫さん

例えば、かぜ薬、解熱鎮痛薬、鎮静薬、鎮咳去痰薬、アレルギー用薬等では、成分や作用が重複することが多く、通常、これらの薬効群に属する医薬品の併用は避けることとされています

ポイント
  • 相互作用による副作用のリスクを減らす観点から、緩和を図りたい症状が明確である場合には、なるべくその症状に合った成分のみが配合された医薬品が選択されることが望ましい
  • 医療機関で治療を受けている場合には、通常、その治療が優先されることが望ましく、一般用医薬品を併用しても問題ないかどうかに治療を行っている医師若しくは歯科医師、又は処方された医薬品を調剤する薬剤師に確認する必要がある

(b) 食品との飲み合わせ

食品と医薬品の相互作用は、しばしば「飲み合わせ」と表現され、食品と飲み薬が体内で相互作用を生じる場合が主に想定されます。

ポイント
  • 酒類(アルコール)は、医薬品の吸収や代謝に影響を与えることがある。アルコールは、主として肝臓で代謝されるため、酒類(アルコール)をよく摂取する者では、肝臓の代謝機能が高まっていることが多い。その結果、肝臓で代謝されるアセトアミノフェンなどでは、通常よりも代謝されやすくなり、体内から医薬品が速く消失して十分な薬効が得られなくなることがある。また、代謝によって産生する物質(代謝産物)に薬効があるものの場合には、作用が強く出過ぎたり、逆に、代謝産物が人体に悪影響を及ぼす医薬品の場合は副作用が現れやすくなる
  • カフェインやビタミンA等のように、食品中に医薬品の成分と同じ物質が存在するために、それらを含む医薬品(例:総合感冒薬)と食品(例:コーヒー)を一緒に服用すると過剰摂取なるものもある
  • 生薬成分等については、医薬品的な効能効果が標榜又は暗示されていなければ、食品(ハーブ等)として流通可能なものもあり、そうした食品を合わせて摂取すると、生薬成分が配合された医薬品の効き目や副作用を増強させることがある
  • 外用薬や注射薬であっても、食品によって医薬品の作用や代謝に影響を受ける可能性がある
クローバーと猫さん

アセトアミノフェンとは、かぜ薬や解熱鎮痛剤に配合される解熱鎮痛成分のことで、3章で詳しく説明するよ

お団子ヘアの女の子

うちのパパはお酒をよく飲むから、肝臓の代謝機能が高まっていて、十分にお薬の効果が得られないかもしれないから注意が必要なのね。

過去問にチャレンジ
医薬品と食品との相互作用に関する次の記述について、正誤を答えよ。

  1. 生薬成分が配合された医薬品は、食品と合わせて摂取することにより、その効き目や副作用が増強されることはない。
  2. 酒類(アルコール)をよく摂取する者は、肝臓の代謝機能が高まっていることが多く、アセトアミ
    ノフェンを服用した場合、体内から医薬品が速く消失して十分な薬効が得られなくなることがある。
  3. 食品には、医薬品の成分と同じ物質が含まれているものがあり、この食品と医薬品を一緒
    に服用することにより過剰摂取となる場合がある。
  4. 外用薬や注射薬は、食品によって医薬品の作用や代謝に影響を受けることはない。


解答と解説

(1)×  : 食品(ハーブ等)として流通可能なものもあり、そうした食品を合わせて摂取すると、生薬成分が配合された医薬品の効き目や副作用を増強させることがある。
(2)〇
(3)〇
(4)×  : 外用薬や注射薬であっても、食品によって医薬品の作用や代謝に影響を受ける可能性がある

4)小児、高齢者等への配慮

クローバーと猫さん

小児、高齢者等が医薬品を使用する場合においては、保健衛生上のリスク等に関して、成人と別に考える必要があります

(a) 小児

新生児、乳児、幼児、小児という場合には、おおよその目安として

  • 新生児:生後4週未満
  • 乳児:生後4週以上 1歳未満
  • 幼児:1歳以上 7歳未満
  • 小児:7歳以上 15歳未満

※ 一般的に15歳未満を小児とすることもあり、具体的な年齢が明らかな場合は、医薬品の使用上の注意においては、「3歳未満の小児」等と表現される場合があります。

小児は、医薬品を受けつける生理機能が未発達であるため、その使用に際して特に配慮が必要です。

ポイント
  • 小児は大人と比べて身体の大きさに対して腸が長く、服用した医薬品の吸収率が相対的に高
  • 血液脳関門が未発達であるため、吸収されて循環血液中に移行した医薬品の成分が脳に達しやすく、中枢神経系に影響を与える医薬品で副作用を起こしやすい
  • 肝臓や腎臓の機能が未発達あるため、医薬品の成分の代謝・排泄に時間がかかり、作用が強く出過ぎたり、副作用がより強く出ることがある
  • 錠剤、カプセル剤等は、小児、特に乳児にそのまま飲み下させることが難しいことが多い。このため、5歳未満の幼児に使用される錠剤やカプセル剤などの医薬品では、服用時に喉につかえやすいので注意するよう添付文書に記載されている
小児、乳児に対して医薬品の販売等に際しての注意点

小児
医薬品の販売に従事する専門家においては、小児に対して使用した場合に副作用等が発生する危険性が高まり、安全性の観点から小児への使用を避けることとされている医薬品の販売等に際しては、購入者等から状況を聞いて、想定される使用者の把握に努めるなど、積極的な情報収集と、それに基づく情報提供が重要となります。また、保護者等に対して、成人用の医薬品の量を減らして小児へ与えるような安易な使用は避け、必ず年齢に応じた用法用量が定められているものを使用するよう説明がなされることも重要です。

乳児
乳児向けの用法用量が設定されている医薬品であっても、乳児は医薬品の影響を受けやすく、また、状態が急変しやすく、一般用医薬品の使用の適否が見極めにくいため、基本的には医師の診療を受けることが優先され、一般用医薬品による対処は最小限(夜間等、医師の診療を受けることが困難な場合)にとどめるのが望ましいです。
また、一般に乳幼児は、容態が変化した場合に、自分の体調を適切に伝えることが難しいため、医薬品を使用した後は、保護者等が乳幼児の状態をよく観察することが重要です。何か変わった兆候が現れたときには、早めに医療機関に連れて行き、医師の診察を受けましょう。

お団子ヘアの女の子

乳児対しては特に気を付けて、一般医薬品の使用は最小限にしてお医者さんの診療を受けるのを優先するんだね。

クローバーと猫さん

うん。そうだね。
また、小児の誤飲・誤用事故を未然に防止するには、家庭内において、小児が容易に手に取れる場所や、小児の目につく場所に医薬品を置かないようにすることも重要だよ。

(b) 高齢者

おおよその目安として65歳以上を「高齢者」としています。
一般に高齢者は生理機能が衰えつつあり、特に、肝臓や腎臓の機能が低下していると医薬品の作用が強く現れやすく、
若年時と比べて副作用を生じるリスクが高くなります。
しかし、高齢者であっても基礎体力や生理機能の衰えの度合いは個人差が大きく、年齢のみから一概にどの程度リスクが増大しているかを判断することは難しいです。
一般用医薬品の販売等に際しては、実際にその医薬品を使用する高齢者の個々の状況に即して、適切に情報提供や
相談対応がなされることが重要です。

クローバーと猫さん

高齢者の特徴として押さえておきたいポイントは…

  • 高齢者は、生理機能の衰えのほか、喉の筋肉が衰えて飲食物を飲み込む力が弱まっている(嚥下障害)場合があり、内服薬を使用する際に喉に詰まらせやすい。
  • 医薬品の副作用で口渇を生じることがあり、その場合、誤嚥(食べ物等が誤って気管に入り込むこと)を誘発しやすくなるので注意が必要である。
  • 高齢者は、持病(基礎疾患)を抱えていることが多く、一般用医薬品の使用によって基礎疾患の症状が悪化したり、治療の妨げとなる場合があるほか、複数の医薬品が長期間にわたって使用される場合には、副作用を生じるリスクも高い。
  • 医薬品の説明を理解するのに時間がかかる場合や、細かい文字が見えづらく、添付文書や製品表示の記載を読み取るのが難しい場合等があり、情報提供や相談対応において特段の配慮が必要となる。
  • 高齢者では、手先の衰えのため医薬品を容器や包装から取り出すことが難しい場合や、医薬品の取り違えや飲み忘れを起こしやすいなどの傾向もあり、家族や周囲の人(介護関係者等)の理解や協力も含めて、医薬品の安全使用の観点からの配慮が重要となることがある。

(c) 妊婦又は妊娠していると思われる女性

妊婦は、体の変調や不調を起こしやすいため、一般用医薬品を使用することにより、症状の緩和等を図ろうとする場合もありますが、その際には妊婦の状態を通じて胎児に影響を及ぼすことがないよう配慮する必要があり、そもそも一般用医薬品による対処が適当かどうかを含めて慎重に考慮されるべきです。

クローバーと猫さん

特に下記には積極的な情報収集と、それに基づく情報提供がなされることが重要です。

  • ビタミンA含有製剤のように、妊娠前後の一定期間に通常の用量を超えて摂取すると胎児に先天異常を起こす危険性が高まるとされているもの
  • 便秘薬のように、配合成分やその用量によっては流産や早産を誘発するおそれがあるものがあるもの

胎盤には、胎児の血液と母体の血液とが混ざらない仕組み(血液-胎盤関門)があります。母体が医薬品を使用した場合に、血液-胎盤関門によって、どの程度医薬品の成分の胎児への移行が防御されるかは、未解明のことも多いです。
一般用医薬品においても、多くの場合、妊婦が使用した場合における安全性に関する評価が困難であるため、妊婦の使用については「相談すること」としているものが多いです。

クローバーと猫さん

妊娠の有無やその可能性については、購入者等にとって他人に知られたくない場合もあることから、一般用医薬品の販売等において専門家が情報提供や相談対応を行う際には、十分に配慮することも必要だよ

(d) 母乳を与える女性(授乳婦)

医薬品の種類によっては、授乳婦が使用した医薬品の成分の一部が乳汁中に移行することが知られており、母乳を介して乳児が医薬品の成分を摂取することになる場合があります。
このような場合、乳幼児に好ましくない影響が及ぶことが知られている医薬品については、授乳期間中の使用を避けるか使用後しばらくの間は授乳を避けることができるよう、医薬品の販売等に従事する専門家から購入者等に対して、積極的な情報提供がなされる必要があります。
吸収された医薬品の一部が乳汁中に移行することが知られていても、通常の使用の範囲では具体的な悪影響は判明していないものもあり、購入者等から相談があったときには、乳汁に移行する成分やその作用等について適切な説明がなされる必要があります。

(e) 医療機関で治療を受けている人等

近年、生活習慣病等の慢性疾患を持ちながら日常生活を送る生活者が多くなっています。疾患の種類や程度によっては、一般用医薬品を使用することでその症状が悪化したり、治療が妨げられることもあります。
購入しようとする医薬品を使用することが想定される人が医療機関で治療を受けている場合には、疾患の程度やその医薬品の種類等に応じて、問題を生じるおそれがあれば使用を避けることができるよう情報提供がなされることが重要であり、必要に応じ、いわゆるお薬手帳を活用する必要があります。
なお、医療機関・薬局で交付された薬剤を使用している人については、登録販売者において一般用医薬品との併用の可否を判断することは困難なことが多く、その薬剤を処方した医師若しくは歯科医師又は調剤を行った薬剤師に相談するよう説明する必要があります。

過去問にチャレンジ
小児等への医薬品の使用に関する記述の正誤について答えよ。

  1. 小児は、大人と比べて身体の大きさに対して腸が長く、服用した医薬品の吸収率が大人と比べ相対的に低い。
  2. 小児は、肝臓や腎臓の機能が未発達であるため、医薬品の成分の代謝・排泄が大人と比べ早い。
  3. 一般的に、5歳未満の患者に使用される錠剤やカプセル剤などの医薬品では、服用時に喉につかえやすいので注意するよう添付文書に記載されている。
  4. 乳児は、一般用医薬品の使用の適否が見極めにくく、基本的には医師の診療を受けることが優先され、一般用医薬品による対処は最小限にとどめるのが望ましい。
解答と解説

(1)× : 服用した医薬品の吸収率が大人と比べ相対的に高い
(2)× : 医薬品の成分の代謝・排泄が大人と比べ遅い
(3)〇
(4)〇 

5)プラセボ効果

医薬品を使用したとき、結果的又は偶発的に薬理作用によらない作用を生じることを
プラセボ効果(偽薬効果)といいます。
プラセボ効果は、医薬品を使用したこと自体による楽観的な結果への期待(暗示効果)や条件付けによる生体反応時間経過による自然発生的な変化(自然緩解など)等が関与して生じると考えられています。

お団子ヘアの女の子

転んだときに、お母さんが「痛いの痛いの飛んでいけ~!」と言ってくれて、何となく痛みが和らいだ気がしたよ

クローバーと猫さん

それもプラセボ効果の一種と考えていいかもね
「病(または健康)は気から」とはよくいったものだね

プラセボ効果によってもたらされる反応や変化にも、望ましいもの(効果)と不都合なもの(副作用)とがあります
プラセボ効果は、主観的な変化だけでなく、客観的に測定可能な変化として現れることもあるが、不確実であり、それを目的として医薬品が使用されるべきではないです。購入者等が、適切な医薬品の選択、医療機関の受診機会を失うことのないよう、正確な情報が適切に伝えられることが重要です。

過去問にチャレンジ
プラセボ効果(偽薬効果)に関する記述の正誤について、答えよ。

  1. プラセボ効果は、時間経過による自然発生的な変化(自然緩解など)等が関与して生じると考えられている。
  2. 医薬品を使用したときにもたらされる反応や変化には、薬理作用によるもののほか、プラセボ効果によるものも含まれている。
  3. プラセボ効果によってもたらされる反応や変化には、不都合なもの(副作用)はない。
  4. プラセボ効果は、客観的に測定可能な変化として現れることはない。
解答と解説

(1)〇
(2)〇
(3)×  :プラセボ効果によってもたらされる反応や変化には不都合なもの(副作用)もあります
(4)×  :主観的な変化だけでなく、客観的に測定可能な変化として現れることもある

6)医薬品の品質

医薬品は、高い水準で均一な品質が保証されていなければなりませんが、
配合されている成分(有効成分及び添加物成分)には、高温や多湿、光(紫外線)等によって品質の劣化(変質・変敗)を起こしやすいものが多く、適切な保管・陳列がなされなければ、医薬品の効き目が低下したり、人体に好ましくない作用をもたらす物質を生じることがあります。

医薬品が保管・陳列される場所については、清潔性が保たれるとともに、
その品質が十分保持される環境となるよう(高温、多湿、直射日光等の下に置かれることのないよう)留意される必要があります。

また、医薬品は、適切な保管・陳列がなされたとしても、経時変化による品質の劣化は避けられません
一般用医薬品では、薬局又は店舗販売業において購入された後、すぐに使用されるとは限らず、家庭における常備薬として購入されることも多いことから、外箱等に記載されている使用期限から十分な余裕をもって販売等がなされることも重要です。なお、表示されている「使用期限」は、未開封状態で保管された場合に品質が保持される期限であり、液剤などでは、いったん開封されると記載されている期日まで品質が保証されない場合があります。

クローバーと猫さん

「使用期限」はよく出題されるから覚えてね

過去問にチャレンジ
医薬品の品質に関する記述のうち、正誤を答えよ。

  1. 医薬品が保管・陳列される場所については、清潔性が保たれるとともに、高温、多湿、直射日光等の下に置かれることのないよう、留意する必要がある。
  2. 医薬品の有効成分は、高温や多湿、光等によって品質の劣化を起こしやすいものが多いが、医薬品の添加物成分は、これらによって品質の劣化を起こすことはない。
  3. 医薬品は、適切な保管・陳列がなされたとしても、経時変化による品質の劣化は避けられない。
  4. 医薬品に表示されている「使用期限」は、開封状態で保管された場合に品質が保持される期限である。
解答と解説

(1)〇
(2)×  : 適切な保管・陳列がなされなければ医薬品の効き目が低下したり、人体に好ましくない作用をもたらす物質を生じることがあります
(3)〇  
(4)×  :未開封状態で保管された場合に品質が保持される期限

クローバーと猫さん

お疲れさまでした。
今日も頑張りましたね。今日はボリュームがたくさんありましたね。
1回で覚える必要はありません。
ゆっくり少しずつコツコツ覚えていきましょう。
Ⅱ 医薬品の効き目や安全性に影響を与える要因についてでした。

目次